全般性不安障害とは?

「心配が止まらない」はこころからのサインかもしれません

「家族や自分の健康がいつも気になる」
「仕事でミスをしていないか何度も考えてしまう」
「将来のことが不安で頭から離れない」
「心配事があると眠れない」
「考えすぎだと分かっているのに不安を止められない」

このような不安や心配が長期間続き、仕事や学校、家庭生活に支障が出ている状態を全般性不安障害(Generalized Anxiety Disorder:GAD)といいます。
全般性不安障害とは、仕事、家庭、お金、健康など、日々の生活の中にあるさまざまな事柄に対して、「過度な不安や心配」がコントロールできずにずっと続いてしまう病気です。
日常的な心配とは異なり、これといった明確なきっかけがないまま心配が広がり、毎日の生活に支障が出るほど強い苦痛を感じます。
米国のデータでは一生のうちに約5.7〜6.2%の人がかかるとされ、女性は男性の約3倍かかりやすいと言われています。平均して35歳頃に発症することが多く、実際に病院を受診するまでに何年も一人で症状を抱え込んでしまう方も少なくありません。
「性格の問題だから仕方ない」と思われがちですが、適切な治療によって改善が期待できる病気です。

全般性不安障害でよくみられる不安のパターン

1.仕事や学業への不安

「ミスをしていないだろうか」
「失敗したらどうしよう」
「周囲に迷惑をかけているのではないか」
という不安が続くタイプです。
仕事や勉強に集中できなくなり、本来の力を発揮できなくなることがあります。

2.家族や人間関係への不安

「家族に何かあったらどうしよう」
「嫌われているのではないか」
「悪く思われているのではないか」
など、人間関係に関する心配が続くタイプです。
安心できる出来事があっても、すぐに別の不安が生まれることがあります。

3.将来への不安

「老後のお金が心配」
「将来うまくいかなくなるかもしれない」
「漠然と不安が消えない」
というタイプです。
実際に問題が起きていなくても、最悪の事態を繰り返し想像してしまうことがあります。

全般性不安障害の主な症状

心の症状:過度な心配、不安感、落ち着かない、緊張感、集中力低下、イライラしやすい、決断が難しい
身体の症状:頭痛、肩こり、動悸、息苦しさ、めまい、胃痛、嘔気、疲労感、不眠

全般性不安障害では、こころの症状だけでなく身体症状が現れることも少なくありません。
内科や消化器内科で検査を受けても異常が見つからず、後から不安障害と分かることもあります。

全般性不安障害の主な原因

全般性不安障害は一つの原因だけで起こるわけではありません。

1. ストレスや精神的な原因

仕事、人間関係、家庭の問題、経済的な不安などが重なることで、不安が慢性化することがあります。
また、不安症はうつ病や不眠症と併存することも多く、不安が長引くことでこころの不調につながることがあります。

2. 発達特性との関連

注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)などの発達特性が背景にある場合があります。
ミスへの不安、対人関係への不安、予定変更へのストレス、感覚過敏による疲労などが積み重なり、不安症状につながることがあります。

3. 睡眠不足や生活習慣の乱れ

睡眠不足は不安を強め、不安はさらに睡眠を悪化させます。
また、カフェインの摂りすぎ、運動不足、不規則な生活なども不安症状に影響することがあります。

全般性不安障害の治療

1. 生活習慣の改善

まずは生活リズムを整えることが治療の基本です。

  • 毎日同じ時間に起きる
  • 適度な運動を行う
  • カフェインを摂りすぎない
  • 十分な睡眠を確保する
  • ストレス解消の時間を作る

2. カウンセリング・心理療法

認知行動療法(CBT)は、全般性不安障害に有効性が示されている心理療法です。
マインドフルネスやリラクゼーションも効果があります。
不安との付き合い方や考え方のパターンを見直し、不安に振り回されにくくなることを目指します。

3. 薬物療法

生活改善だけで十分な改善が得られない場合には薬物療法を行います。
SSRIやSNRIと呼ばれる抗うつ薬が第一選択となります。
効果が現れるまでに2〜4週間程度、十分な効果が出るまでに3か月程度かかることがあります。
再発を防ぐために、症状が改善してから少なくとも6〜12ヶ月間は服用を続けることが推奨されています。

このような場合は精神科・心療内科へご相談ください

不安は誰にでもある感情ですが、過度な不安が続くと心身の健康に大きな影響を与えます。
「考えすぎなだけかもしれない」と我慢してしまう方も多くいらっしゃいますが、全般性不安障害は治療によって改善が期待できる病気です。
不安や心配でお困りの方は、一人で抱え込まずご相談ください。

当院では、不安症状そのものだけでなく、その背景にあるストレス、生活環境、発達特性、対人関係の悩みなども含めて総合的に評価します。
高田馬場という学生や若い社会人の多い地域特性から、学業、就職活動、職場での人間関係、将来への不安などに関連したご相談を多くいただいております。
また、臨床心理士・公認心理師によるカウンセリング体制を整えており、薬物療法だけではなく、不安との付き合い方や考え方のクセへのアプローチも行っています。
発達検査(WAIS-IV等)にも対応しており、不安症状の背景に発達特性が関係している場合には、その特性を踏まえた支援や治療をご提案することが可能です。
「いつも何かを心配してしまう」「不安が強くて日常生活がつらい」という方は、一人で抱え込まずお気軽にご相談ください。

FAQ

カフェインで不安が悪化する?
カフェインは覚醒作用がありますが、同時に不安を強めることがわかっています。
カフェインを摂取すると中枢神経を刺激され、「交感神経の活性化・心拍数の増加・アドレナリン分泌の促進」がおこります。
このため、体としては「軽いストレス状態」に近づきます。
その結果、不安感として自覚されることがあります。

研究でわかっていること
・高用量カフェイン(200〜400mg以上)では不安症状が増える傾向がある
・パニック障害や不安傾向のある人では症状が誘発されやすい

特に影響を受けやすい人
・不安を感じやすい性格傾向の人
・睡眠不足の人
・ストレスを強く感じている人
・空腹時の摂取

推奨
・1日のカフェイン摂取量を400 mg以下に制限する
・1回の摂取量を200 mg以下に制限する

不安が気になる方は、カフェイン摂取量やタイミングの見直しが一つの対策になります。
【参考文献】 van Dam RM, Hu FB, Willett WC. The New England Journal of Medicine, 2020
抗不安薬はクセになる?
抗不安薬としてよく使われるベンゾジアゼピン系の薬は、不安を和らげ、緊張をほぐす即効性のある薬です。
適切に使えばとても有用ですが、「クセになるのでは?」と心配される方も少なくありません。
抗不安薬の依存には、精神依存(飲まないと不安になる)と 身体依存(急にやめると離脱症状が出る)の2つがあります。
特に長期間の使用や高用量、多剤併用でリスクが高まります。
離脱症状には、不安・不眠・焦り・ふるえ・頭痛などがあり、もともとの症状と区別がつきにくいこともあります。
また、常用量でも依存が生じる「常用量依存」という状態も知られています。
薬の量は増えていないのに、やめようとすると離脱症状が出て中止が難しくなるケースです。
依存を防ぐためには、最小限の量を最短期間で使うことが基本です。
複数の抗不安薬を併用しても効果が強まるわけではなく、むしろ依存のリスクが高まります。
また、薬だけに頼らず、リラクゼーションや睡眠衛生指導などの非薬物療法を組み合わせることも有効です。
抗不安薬はあくまで「対症療法」であり、不安の背景にあるストレスやうつ病などの治療が本質的な改善につながります。
減薬や中止を考えるときは、医師と相談しながらゆっくり段階的に進めることが安心につながります。
当院では、抗不安薬だけに頼るのではなく、必要に応じてカウンセリングを組み合わせながら、将来的な減薬も見据えた治療を行います。

参考文献:丹野行博,村岡寛之,稲田健:ベンゾジアゼピン受容体作動薬の常用量依存とその回避に向けて.
認知行動療法って何?
認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioral Therapy)とは、「考え方」と「行動」の両方に働きかけ、つらい気持ちや不安の改善を目指す心理療法です。
たとえば、失敗した時に「自分はダメだ」と極端に考えてしまうと、不安や落ち込みが強くなります。
認知行動療法では、その考え方の偏りを整理し、より現実的で柔軟な捉え方へ修正していきます。また、考え方だけでなく、生活リズム・行動習慣・対人行動なども少しずつ改善していく点が特徴です。
対象となる症状は幅広く、うつ、不安、パニック、強迫、不眠などに効果が確認されています。
認知行動療法は、考え方を無理にポジティブにする治療ではありません。現実に合った、少し楽になれる見方を一緒に探していく方法です。
不安や落ち込みの背景にある「考え方のクセ」に気づき、より現実的で楽になれる捉え方を一緒に探していきます。
薬物療法と併用することで、より症状の改善が期待できる場合があります。認知行動療法単独で行うことも可能です。
当院では認知行動療法を取り入れたカウンセリングを受けることができます。

参考:日本認知行動療法学会